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5月10日(火):
朝食をお世話してくれた女の人も come をコムと発音しているのに気付いた。宿泊客は労働者風の人が多
かった。その女の人は40歳を越えていないと思うが、喋る言葉に訛りが多くよく聞き取れなかったけれど、
鼻歌を歌いながら軽快に動き回っていて、陽気で気の良さそうな人であった。
Bradford 8:53発、ロンドン King's Cross 行きの列車に乗る。途中 Peterborough(11:49着) で7分待ちで
乗り換え、Cambridge には午後1時丁度に到着した。列車の中では、昨日コピーして貰ったギッシングの
'The Foolish Virgin' を読む。あと5頁ほど残っているが。
駅の Buffet で軽く食事をした後、ケンブリッジの町の中心にある Tourist Information Office でこの
ゲストハウスを紹介して貰った。Mr.& Mrs.Barden : 27 Malcolm St. Cambridge. オックスフォードと同じシ
ステムで、紹介料として30ペンス払う。
この家には大阪の京橋に実家があるという学生がもう1年も滞在している。ちょっと
言葉を交わしただけだが。関西外語大の四回生だそうだ。
この町をぶらつく。大学町としてオックスフォードと共通の雰囲気を持っているが、どこか受ける感じが
違っていた。このケンブリッジの方が広くゆったりしていて新しい感じがする。主要な college が川の東側
に整然と建ち並んでいる。従って各カレッジ間には **Street とか **Road などと名付けられている道がな
い。2〜3の Lane があるだけである。St.John's College, Trinity College, Caius College, Clare College,
King's College, St. Catharine's College, 等の間について言えばだが。
どちらの大学町も旅行者には容易に心を開いてくれない、といった感じであるが、僕としてはオックスフォード
の方が親しみが持てる感じがした。ケンブリッジでは近代の大学のように、ここから大学の構内だなと思わせる形
を持っているが、オックスフォードでは、旅行客にここからここまでが大学なんだぞと思わせないところがいい。
5月11日(水):
郵便局で先生へ葉書を出した後、このゲストハウスのすぐ近くの Christ's Pieces という公園のベンチに
腰かけて、昨日読み残した 'The Foolish Virgin' を読む。この家の女将さんが犬を連れて散歩していた。
Fitzwilliam Museum に入る。ターナーやコロー、ドガ、ルノアール等の絵画。Blake のコレクション。
一階はいろんな国の陶器類が陳列されてあった。
Trinity St. にある古本屋で、E.Dowson の詩集(£3.50)を見つける。初版は1903年。この本は1929
年のリプリント版。主人に探している書物のリストを見せると、Irving の 'The Alhambra' は以前あったと
かで、探してくれたが、結局見つからなかった。この本は先生は既に持っているかも知れないが。
帰って風呂に入って、近くの King St. にある、昨日行ったレストランで夕食をとる。日本女性と思われ
る人がウエイトレスとして働いていた。僕の所まで来なかったので声をかけなかった。しかし中国人かも知
れない。その後、A.D.C.THEATRE でベケットの戯曲、'Endgame' と 'Come & Go' を観る。この劇の演出は
Akemi Horie-Webber とパンフレットに記されていた。'Come & Go' は5分間位の寸劇。
日本へ帰ったら、もっと勉強しなければならない。その気になってやれば出来ないことは決してない。ここ
7〜8年間の遅れを取り戻さねばならない。
5月12日(木):
朝食の後、僕の部屋でH君と話しをする。やはり1年も滞在していると、この町にも英国にも、
深さはともかくとして、かなり通じているようだ。インバネス湖へは2度も行ったと言う。僕はこのイース
ターホリデイを利用して友人数人とエディンバラへ旅行したが、やはりネス湖へは行ってみるべきだったと残念
に思ったが、3ヶ月の滞在なのだから、まあ、仕方のないことだ。
11:00a.m. 頃、American Military Cemetary がこの町から4マイルほど離れた所にあると案内書にでて
いるので、行ってみようと思いたつ。が、家を出るや、突然の Shower!!!!! 雷が鳴り出し、閃光も走った。
仕方なく食料を仕入れて帰り、この部屋で食事。雨は部屋に着く前には止んでいたが、もう行く気をなくし
てしまっていた。その後、昨日買った Dowson の詩集を取り出し、ペラペラと頁をめくってみる。
ARTHUR SYMONS が序文を書いていた。
午後3時少し前に部屋を出て、Folk Museum へ行ってみる。
Trinity St. には Heffers という本屋があった。昨日入った古本屋の向い側。大きな書店で、Downstair,
Ground,Upstair と書物がぎっしり詰まっている。Harvester Press 出版のギッシングの本が三冊、Pierre
Coustillas 氏の本(書名は忘れてしまった)が一冊、ADRIAN Poole の "Gissing In Context" が一冊置か
れてあった。Sillitoe の小説は別の棚に並んでいた。Pritchet の本も確認しておけばよかった。
Heffers の隣にも古本屋があった。ここにも探している本はなかった。Heffers のような大きな本屋に入
ると、何か圧迫されそうな感じを受ける。丁度僕が英文学に興味を持ち始めた頃、丸善の洋書売場で感じた
のと同じような威圧感。自分の語学力を思い知らされているからだと思う。この英国滞在を発条として、帰国
後はこの町の学生達を見習おうと思う。
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